「あぽやん」シリーズで有名な新野剛志さんのブックレビューです。
表紙からして、ハードな感じなんだろうなとは思っていましたが、いかんせん「あぽやん」のイメージが強い。
ズルズルと陽気なイメージを引きずりながら読み進めたら、良い意味でショックを受けました。
Contents
あぽやんのイメージが強いままな私は化石
ワタクシは強欲です。どのくらいかというと、3年前まで違う町で馬車馬のように働いて、バカみたいに高い住民税を違う町に払っていた(過去形)わけでちょっと時間に余裕のある今現在、公共サービスはフルで利用して今までの住民税分の元をとろうとする強欲な人間でございます。今住んでいるところ関係ないのに。
つまりは図書館フル活用しています。という話です。
でも本音は出版業界にちゃんと貢献したいし、人の部屋の匂いとかが香る本もたまにあったりで実は本は新品を買いたい人です。
なわけで、長距離移動があるときはそれを理由に本を購入します。新品の本の匂いが大好きです。
が、現実はなかなか厳しいですな。
自分の利益だけ追うと、結局は自分にかえってくるのは明確なわけで(この場合は本屋がつぶれて、新刊がつまらんものばかりになるということ)自分の中で上手くバランスとりながら図書館と本屋と付き合っていきたいです。
話を戻して…新野剛志について
今回本棚から手にしたのはドラマ化された「あぽやん」シリーズで人気を博した新野剛志の2016年の作品です。
新野剛志さん、写真でみるとなんだか洒脱なオジサマでびっくり。建築家みたいな雰囲気!確かにこの感じなら「あぽやん」みたいなポップな本を書けそう。
確か「あぽやん」はコミカルで若々しい内容だったかと記憶しています。すごく面白くて、すぐに2作目も買いに本屋へ走ったっけ。
というわけで社会人の青春ストーリーを描いた「あぽやん」のあと、どんな作品を書いているのかが気になってこの本を借りてみました。
THE現代なストーリー
物語の始まりは渋谷。いいですねぇ。
最初から問題の火種が飛び込んでくるので、主人公の人となりや身なり醸し出す雰囲気などが自分の頭の中で構築される前にストーリーが進んでいきます。結構その感じで各々の人物描写はあっさりしたまま話は進んでいきます。
今回、鍵となる現代ツールは『Twitter』
裏垢(裏アカウント)を調べて調べまくって現代社会の若い女の子の闇をこれでもか!とあぶり出します。
アラサーの私でも存在は知ってるけど想像以上だった
裏アカなんてものは私たちの年代から存在はしてて、特に特別なものだという認識もなかったので最近のTwitterの裏アカでは男を釣るためのもの、自分の性的な承認欲求を満たすために使っているというニュースが出ても「まぁそうでしょうね」程度の感想でした。
でも実際読んでリアリティのある裏アカ事情を知っていくと結構えぐい。
えっ本当にこれ実際に行われていたらヤバいよ!?って不安になるレベル。おっそろしいくらいバイオレンス。
フィクションとはいえども、実際に起きている事柄を題材にしているわけで、もはや作品のベースとなるものが恐ろしくて戦慄する。
バイオレンスっていっても性的な方でね。
イマドキ女子中高生はあんなことやこんなことも知っているの!?経験するの!?的な笑。
平和な時代の女子高生でよかった~笑。
裏アカ多すぎ把握出来なくなる問題
裏垢が多すぎて、サーーッと目を通すように読むと訳が分からなくなります笑。どちらかというと、じっくり読む派ではなくさらっと流し読みする派な私。
普通のハードボイルド小説なら許容範囲内の人数なんですが今回は裏アカが絡んできて、しかも彼女たちはその時の気分によってアカウントを使い分けているので裏アカの数も多いんです。
久々に登場した名前を見ると「この人誰だっけ?」と考えてしまいます笑。まぁ読めば思い出すんですけどね。
そういった意味では、通勤の電車内とか細切れ時間に読む本には向いていないです。
日をまたいで読むと、ますます訳わかんなくなりそう。
あまりにも主人公が淡々としていて
ハードボイルドな小説は大体、主人公がぱっと見冷静沈着だけど実は熱い心と傷ついた心が混在していて不器用かつ、ぶっきらぼう。でもお人好しゆえヒロインの子を助けていくみたいなものが多いんですけど、今回もその大枠に沿った感じかな。
でも私はその大枠が大好物なので良いんです。
でも気になったのが、フレッシュピチピチ娘があんなことやこんなことになっているのを物陰から察しても、冷静でいる主人公が仙人すぎる件。
興奮というか照れみたいなものは最初の方はあったかな。でも嫌悪感がないのは裏アカに毒されてで麻痺してしまったから?ん、こんな状況では男は嫌悪感を抱かないのか?
ちょっと主人公が仙人すぎて感情移入というか身近に感じられなかったのは、ざんねん。
同じ主人公が仙人系でも逢坂剛作の初期の百舌の主人公(倉木)とかは、身近に感じられたんだけどな。
最後のどんでん返し…無理矢理どんでん
最後はちょっとした、どんでん返しがあったんですけど、ちょっと無理矢理だったかなぁ。犯人の動機づけがちょっと無理筋というか、うーん。
なんか惜しい!!!
最後が色々無理しすぎて最終的に主人公がハンマー襲撃を受けても、ものともしないスーパーマンに進化しちゃってます。
仙人からスーパーマンへの進化。
でも女子高生たちの問題は私個人的にはあの終わりで良かった。
「彼女たちは戦っている~」は想像すれば分からなくもないけど、もっと彼女たちがもがいている姿に迫ってほしかったかな。とはいえホッとした。そしてあの子たちの和解があったであろうと思わせるシーンが、ダークなストーリーの唯一の光。
一気に読み切れる作品
なんやかんや文句はつけたけど、さすが新野剛志作品なだけあって一気に読むことができました。
最近、ハードボイルド系の小説では外れが多かったので安心して読めた方かな。
やはりある程度キャリアを積んだ人の作品は安心感が違うし、多少無理やりでも一応は話のスタンスや筋は通っているので納得できますね。
割と本屋のポップで若手作家がごり押しされている本を読むと外れを引く気がする…。当たり外れが大きいってことですかね。
今回は性的な内容が大きかったから、女性には淡々としすぎていて「?」となるところも。
ただそれはセンシティブな内容を果敢に挑戦した結果であると理解しているので、他の本に期待です。むしろその社会問題にもなっているものを掘り下げてメインテーマで作品を作っていくのはすごいなぁと思いました。
今後も新野剛志さんの本は読んでいきたいです。
★3!